平成16年8月5日

健康増進課感染症・難病担当

担当 森屋・山下

内線 1839

直通 0952−25−7075

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保育所におけるB型肝炎集団発生調査報告書について

今般、「佐賀県B型肝炎集団発生調査対策委員会」は、当該保育所における感染拡大の防止を確認するとともに、再発防止策を取りまとめたことから、公表します。

 

【ポイント】

     B型肝炎の感染経路は、従来の知見では、直接に患者の血液、粘液、分泌液に接触する行為(母子感染、性行為、医療行為等)と考えられていたが、今回の事例では、日常生活の中でも感染が起こりうることを確認し、その感染様式には出血及び滲出液を伴う皮膚疾患が関与している可能性が示唆されたこと。

     今回の事例では、感染拡大を防止するために、標準的な予防策に加えて、ワクチン接種を勧奨し感染拡大を防止した。このことは、感染防御策にワクチン接種を加えることが有効であることを示しているものと思われること

 

 

1.事例の概要

     平成14年4月、佐賀医科大学付属病院(現佐賀大学医学部付属病院)から佐賀中部保健所に急性B型肝炎発生届けがあり、当該患者の通園している保育所におけるB型肝炎の集団感染が疑われたことから、県では平成14年5月、「佐賀県B型肝炎集団発生調査対策委員会」を設置し、@当該保育所におけるB型肝炎の蔓延防止に努めるとともに、A原因の究明とB再発防止策の検討を行ってきた。

 

 ○ 県では、当該保育所に対する衛生指導や園児に対するワクチン勧奨などを行い、平成16年2月の追跡調査において新たな感染者はなかったことから、平成16年3月、「佐賀県B型肝炎集団発生調査対策委員会」は感染拡大防止を確認した。

 

2.原因の究明(感染源・感染経路の究明など)

(1)集団感染の疑いを確認

     @佐賀市、佐賀郡内の症例検索、A保育所関係者のスクリーニング検査、B感染源検査、C感染経路調査等を行った結果、合計25名の者(園児19名、職員6名)が当該保育所内でB型肝炎に感染した疑いがあることが明らかとなった。

(2)感染源

     感染源は、HBVキャリアである元職員から検出されたウイルスの塩基配列が他のウイルス陽性者9名と一致していることと疫学調査の結果から、元職員がもともとの感染源であると推定されたが、元職員がすべての感染者の感染源になっているとは言えず、個々の感染源を特定するには至らなかった。

(3)感染経路

     感染経路については、疫学的には@HBVキャリアの元職員から園児への感染、A園児間の感染、B園児から職員への感染、C兄弟間、4つの可能性が考えられ、現場の状況調査や保育士等からの聞き取り調査等から、感染につながりえることを否定できない様々なエピソードが確認され、感染様式に血液や滲出液を伴う皮膚疾患の一定の関与が疑われたが、特定するには至らなかった。

(4)感染リスクの分析結果

     再発防止策を検討するために、感染リスクを分析した結果、@皮膚疾患を有する場合やA年少児の保育は相対的に感染リスクが高いと推定された。

 

3.感染拡大防止策の実施

(1)感染源対策

     皮膚疾患の治療、出血部位の保護及び長袖着用などの服装の指導等を行った。

(2)感染経路の遮断

     処置行為の改善、タオルやスプーンの共用中止及び玩具の適切な管理等の指導を行った。

(3)環境衛生の改善

     医務室の改善、消毒管理の徹底等の指導を行った。

(4)感受性対策

     ワクチン接種を指導した。

 

4.再発防止に向けた今後の対応策(提言)

(1)ワクチン接種の勧奨

     集団保育を早期から開始する場合で、身近にHBVキャリアが存在している場合には、乳幼児には標準的予防策を求めることは難しいことから、ワクチン接種を勧奨することも一考すべきである。

(2)保育所・幼稚園の関係者に対する衛生教育の徹底

○ 今回の事例では感染経路の完全な特定は困難であったが、血液や滲出液を伴う皮膚疾患を介して感染した可能性があることが示唆されている。このため、血液だけでなく滲出液についても血液と同様に十分留意して取扱うことなどを周知徹底していく必要がある。

(3)母子感染防止の徹底と母子感染の実態等の把握

     市町村に対してHBVキャリア妊婦の発見とHBVキャリア妊婦に対する保健指導の徹底を指導するとともに、医療機関に対してHBVキャリア妊婦・出生児への適切な対応を要請していくことが求められる。

(4)感染症発生動向調査のB型肝炎の届出の徹底

     医療機関への周知徹底

 

 

 

 

 

 

 

(参考資料)

 

1.B型肝炎の感染経路

 

○ B型肝炎の主な感染経路は母子感染、性行為、医療行為等であり、日常の生活では容易に感染しないと考えられている。

      性行為で感染した場合、成人は免疫力が発達しているため、急性肝炎を経て、ほとんどの人が体からウイルスを排除でき治るが、母子感染の場合、乳幼児は免疫力が弱いため、ウイルスを体から排除できず、キャリア化してしまうことがある。

 

2.B型肝炎の母子感染予防対策

 

      わが国では1985年から母子感染予防対策(キャリア妊婦からの出生児に対するワクチン等を投与)が導入されており、この結果、わが国における小児のHBVキャリア率は約0.3%から0.03%に激減しているとされている。